旧下今井村(おくまんだしの水、船宿など)

○旧下今井村(おくまんだしの水、船宿など)

「東都近郊図」(文政8(1825)年 都立図書館蔵)

 「東都近郊図」から、「下今井」部分の抜粋です。新川、古川、江戸川に囲まれた三角地帯です。
 「おくまんだしの水」「投網」「新川の梨」が有名でした。

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<おくまんだしの水>

 熊野神社前の旧江戸川は深い淵になっており、多くの「だし杭」が打たれていました。ここの水は「おくまんだしの水」と呼ばれ、徳川将軍家は船を使って、この水を江戸城に運び、茶の湯に用いました。野田の醤油の製造にも使用されました。また、本所・深川・大島あたりにこの水が売られました。

「水売/飲用水売」(世渡風俗図会 清水晴風)/「水売」(江戸年中風俗之絵 橋本養邦)国立国会図書館蔵
 上水の届かない本所や深川、大島では、上水の「余り水」を水船が運び、住民は棒手振りの水売から飲料水を買っていました。上水は江戸市中に給水後、余り水が銭瓶橋及び一石橋の吐樋から放流されていました。幕府の鑑札を受けた水船業者が水船に汲んで本所や深川に運び、あるいは廻船に売水していました。上水の余り水が主ですが、おくまんだしの水も売られていたようです。

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「江戸両国すずみの図」(豊国)
 隅田川右岸の両国広小路が描かれています。行商に出る冷やし水売りが描かれています。冷やし水には、上水の余り水ではなく、「おくまんだしの水」が使われたものと思われます。

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 拡大
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<小林一茶「水売の今きた顔や愛宕山」>
 小名木川を水売り船が往来し、水だ水だと一軒一軒に水売りにきていた事が伝えられています。 小林一茶が句を詠んでいます。 
 「水売の今きた顔や愛宕山」(文政二年)


「名所江戸百景 利根川ばらばらまつ」(広重)
 江戸名所百景の中で場所の記載がなく、描かれた場所が確定していない1枚です。広重の時代には、「利根川」とは、今日の旧江戸川のことです。
 旧江戸川の新川東水門付近か妙見島あたりから、上流方面を望んでいるという説が有力なようです。江戸川の名産である鯉を獲るため投網が打たれています。

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 左手から進んでくる船を拡大すると、新川では曳船で航行するための杭が見えるので漁船ではなく行徳船と推察します。
 妙見島上流の新川河口付近の先から右手に大きく湾曲していく下今井村「おくまんだし」付近の江戸川を猫実から描いていると推察します。

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「絵本江戸土産 利根川 ばらばら松」(広重)
 挿絵には「坂東一の大河なれば異名を坂東太郎とよぶ 鯉をもて名品とす 川風に揉れ屈曲して松は自然の振をなし 眺望尤勝れたり」とあります。

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○下今井熊野神社 江戸川区江戸川5-7-6

 下今井村の鎮守として、下今井稲荷神社・下今井香取神社とともに宝永4(1707)年に創建したといいます。「おくまんさま」と呼ばれ、江戸川を上下する船人の信仰を集めていました。
 神社前の江戸川は「おくまんだし」と呼ばれ、「おくまんだしの水」として有名でした。

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(説明板)
「熊野神社
 熊野神社は、旧下今井村の鎮守で、「おくまんさま」とよばれて、江戸川を上下する船人の信仰を集めていました。宝永年間(一七〇四ー一七一一)の創建と伝えられ、祭神は伊佐奈美神です。
■おくまんだしの水
 本神社前の江戸川は、「おくまんだし」とよばれ、水流の関係で深い瀬となっています。ここの水は、とくにきれいで、こなれていたために、昔は徳川将軍家の茶の湯につかわれていたと伝えられています。
野田の醤油の製造をはじめ、本所、深川、大島あたりでもこの水を買って飲んだといわれています。
■芭蕉句碑
 本神社境内の左隅にあります。
 「茶水汲むおくまんだしや松の花」
 芭蕉の句と伝えられています。昭和四十三年十月十五日、氏子のかたがたによって建てられました。
  平成二年三月  江戸川区教育委員会

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<芭蕉句碑>

 昭和43(1968)年建立の芭蕉の句と伝えられている句碑で、出典は不詳です。
 碑陰には、氏子総代塩脇忠一郎氏により明らかにされたとあります。

 「茶水汲むおくまんだしや松の花」

 「おくまん」は、お熊さま(熊野神社)、「だし」はだし杭のことです。熊野神社前の江戸川は深い淵になっており、水流が堤を壊すことを防ぐために、多くの「だし杭」が打たれていました。
 徳川将軍家は船を使って、この水を江戸城に運び、茶の湯に用いました。野田の醤油の製造にも使用されました。また、本所・深川・大島あたりにこの水が売られました。

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<梅見の句碑>

 寛政7(1795)年の「梅見の句碑」です。梅屋敷とよばれた大塚氏(新左衛門)邸内にあったものだといわれています。
 「菅家寫梅見門 あしあらふ ながれに梅のにほひかな」

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<狛犬>

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<手水鉢>

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<社殿>

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<水神社>

 文政9(1826)年の手水鉢があります。

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○屋形船あみ元 江戸川区江戸川5-2-4

 付近では一番古くから船宿を営んでおり、下今井熊野神社の隣にあります。
 「あみ元」の船は、殿様の飲む水を汲むのに使われていたようです。

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○下今井の行徳道道標 江戸川区文化財弁 江戸川区江戸川4-20-8 船宿あみ弁

 船宿あみ弁の前に「行徳道道標」があります。江戸川区教育委員会の説明板は設置されていませんが、江戸川区文化財の道標です。かつて古川に架かっていた橋の袂に置かれていた道標で、紀年は記されていませんが、江戸時代の道標とされています。

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 正面「青面金剛」
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 左側面「左 江戸道」
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 右側面「右 行徳道」
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○伍壱神社 江戸川区江戸川5-31-6

 鯉を祀った伍壱神社(こいじんじゃ)です。
 屋形舟「あみ幸」の敷地内にあります。

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○江戸川屋形船 あみ幸 江戸川区江戸川5-31-6 HP

 元は投網漁(とあみりょう)から始まり創業100年に至る屋形船「あみ幸」です。

<あみ幸の屋形船群と妙見島>

 展望デッキのある定員70人の第六あみ幸丸が繋留されていました。
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 旧江戸川下流には妙見島(こちらで記載)が見えます。
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(参考) 隅田川お花見屋形(こちらで記載


○新川口児童遊園 江戸川区江戸川5-36地先

 新川が旧江戸川に注ぐ河口の上に作られた公園です。

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<新川梨>

 享和年間(1801-1804年)に下今井村で梨の栽培を始めた大塚宗蔵と新川梨の説明板が建っています。

(説明板)
「新川梨について
 享和(一八○○年頃)の時、大塚宗蔵は新川の南で梨の栽培を始めた。改良を重ね文政四年(一八二一年)の秋収穫した梨を幕府に献上し好評を得、その後も毎秋幕府に納めた。
 この梨は、甘く柔らかく歯切れがよく天下にない味覚で「新川梨」と呼ばれ江戸の町でも売られ、新川周辺で栽培も広まったが、大正六年(一九一七年)の大水害で被害を受け、その後梨栽培は衰退した。
 文政八年(一八二五年)宗蔵の子吉豊は父の一周忌にあたり業績を刻んだ石碑「楽誉君梨種梨樹碑」を梨園に建てた。
 この碑は、現在大塚家の菩提寺今井の浄興寺に移されている。
  平成二十七年三月 江戸川区」

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<名所江戸百景 利根川ばらばら松>

 新川東水門付近か妙見島あたりを描いたとする「名所江戸百景 利根川ばらばら松」の説明があります。

(説明板)
「「名所江戸百景 利根川ばらばら松」歌川広重
 この利根川は、現在の江戸川(旧江戸川)です。場所は、新川東水門付近か妙見島あたりといわれています。帆船や筏が通航し、松が風趣を添えていました。大きく投網が描かれています。」

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